冬の車中泊で、気を付けたほうがよいことは何でしょうか? 寒さ対策としてしっかり防寒することは大事そうですが、車中泊ならではの気を付けるべきことはあるのでしょうか?
今回は、そんな疑問にこたえるべく、日本で唯一の車中泊専門誌『カーネル』の編集長であり、「Car寝る博士」としてカエライフでもお馴染みの大橋保之さんに、冬の車中泊についていろいろと教えてもらいました。聞き手は、カエライフ編集部です!
しっかり対策して、冬の車中泊を快適で楽しく過ごすために参考にしてみてください!
- 大橋保之さん/カーネル編集長/Car寝る博士
- 車中泊を楽しむ雑誌『カーネル』の編集長にして、アウトドア情報メディアサイト「SOTOBIRA 」も運営。プライベートでは日産「ウイングロード」、会社用には日産「NV200バネット」がベースのライトキャンピングカーを駆って、公私問わず車中泊。 著書に『やってみよう! 車中泊』(中公新書ラクレ)がある。
- カエライフでは「Car寝る博士」として車中泊に関するいろいろな知識を教えていただいています。Car寝る博士シリーズ
目次
何をどう暖かくすればよい? クルマの防寒とカラダの保温
カエライフ編集部:(以下、編集部):白衣を着て「Car寝る博士」として登場していただけるんですね。
大橋:カエライフではこのかっこうの方が不思議と落ち着くので…(笑)。 Car寝る博士では、車中泊のやり方をいろいろ紹介しています。詳細は「Car寝る博士シリーズ」をご覧ください!
編集部:では、さっそく教えてください。冬の車中泊では、何をどう工夫すればよいのでしょうか?
大橋:冬の車中泊で大切なことは、寒さへの対策です。具体的には大きく分けて、
✅クルマの防寒
✅カラダの保温
について対策をする必要があります。それぞれについて詳しく説明しましょう!
編集部:当然アイドリングはストップですね?
大橋:はい、アイドリングストップは基本ですし、降雪・積雪時のアイドリングは命の危険にかかわりますので厳禁です(後述)。冬の車中泊には、しっかりと対策と準備をしてのぞみましょう!
クルマの防寒
窓をふさぐのが最大の防御! 窓ガラスからの冷気をさえぎる方法
大橋:クルマの防寒でまずやるべき対策は、窓(ウインドウガラス)からの冷気をできるだけ遮ることです。外からの冷気は、主に窓ガラスを通して車内に伝わってきます。すべての窓をできるだけ断熱性の高いもので覆うのが効果的です。
編集部:窓を覆うシェードはどんなものがおすすめですか?
大橋:シェードは、車種専用設計のものがベターですが、厚手の銀マットで自作してもOKです。また、シェードと銀マット、カーテンとシェードなどを組み合わせて併用すればより効果的に冷気をさえぎることができます。
編集部:なるほど。銀マットで自作するやり方は以前こちらの記事(ステップワゴンの車中泊)で紹介しましたね。
ステップ部分からの冷気の入り込みに注意
大橋:見逃しがちなのが、ステップ部分(写真赤丸部分)からの冷気の入り込みです。実際に体験してみないと分かりづらいかもしれませんが、この部分からの冷気の侵入はあなどれません。気温が低い場合には必ずやっておいたほうがよい対策です。
編集部:ステップ部分は具体的に何で埋めたらよいでしょうか?
大橋:ここを埋めるための専用品はないので、簡易的な方法としては、ビニール袋に衣類などを入れて埋め込むことです。ただ、ビニール袋は夜中に触れるとシャカシャカと音がするので、洋服やタオルを入れたバック類や大きめのタオルなどを使うのがおすすめですね。
カラダの保温
寝床・マット
編集部:次にカラダの保温対策として、寝床については何に気を付けたらよいですか?
大橋:寝床にはできるだけ厚手のマットを用意するのがよいでしょう。通常のクルマには断熱材を挟んだ層がないため、下からの冷気が伝わりやすくなっています。
大橋:荷室にじかに寝る場合は特に厚手のマットやシートが必要になります。車の構造として可能であれば、寝床の下に空間をつくることができる車両だと、冷気の入り込みが和らぐのでベターです。
編集部:今回使っているFREED+(フリードプラス)は荷室下に空間があり、底冷え対策という意味でもバッチリですね。
寝袋・寝具
編集部:寝具については具体的にどんなことに気を付けて選べばいいですか?
大橋:本格的な保温性の高い寝袋を用意するのが安心です。羽毛布団などの冬用の寝具もよいですが、容量がかさばるのでその意味でもコンパクトにまとめることができるアウトドア・登山用の本格派寝袋がおすすめです。
編集部:本格的といってもいろいろ種類がありますが、具体的に選ぶ基準はありますか?
大橋:冬用の寝袋には、どのくらいの温度までなら多くの人が快適に寝ることができるか、という「快適使用温度」というものが設定されています(メーカーにより呼び名は異なります)。その快適使用温度が、余裕をもってマイナス7度くらいまで対応可能なものを選ぶと安心ですね。
衣類で調整
編集部:衣類でも気を付けるべきことがありますか?
大橋:基本的なことですが、重ね着をして体温を保つことも冬の車中泊では大切です。ふだん自宅で寝る場合には室内温度にあわせて薄着で寝る人もいるかと思いますが、冬の車中泊では重ね着をして体温を保つことが大事になります。また、クルマで出かける場合はエアコンを使うため、クルマに乗る段階で薄着になりがちですから、その点でも注意が必要ですね。
編集部:たしかにクルマに乗る場合、そもそも薄着のことが多いかもしれません。意識して気を付けたいところですね。
大橋:それから、インナーについては吸水性や速乾性のあるものがベターです。登山のように運動するわけではないのでそれほど敏感になる必要はありませんが、寝袋の性能がよすぎて寝汗をかくなんてことも。また、アウトドア用のダウンウエアもあると安心です。しっかりした寝袋があれば就寝時にまでは必要ないかもしれませんが、万一のために温度調整できるようにしておきたいです。
編集部:ほかに保温対策は?
大橋:首回りをあたためると効果的に保温できるともいわれているので、ネックウォーマーを活用するのもいいと思います。また、冷え性の人は厚手の靴下を活用するのも手ですね。
その他のあったかグッズ(カイロ・湯たんぽ・電気毛布)を活用
大橋::一般的な発熱グッズを活用するのもよいと思います。状況に応じて試してみてください。
✅カイロ:貼ってもいいし、寝袋のなかにいれてもいいです。ただし低温やけどに注意。
✅湯たんぽ:体には密着しないように注意。寝るすこし前に寝袋内に入れておくとなおよし。お湯を沸かす必要がない充電式の湯たんぽも便利。
✅電気毛布:暖かさという意味では、かなり心強い味方。ただし使用する場合、容量が十分なポータブルバッテリーなどが必要。
▼ポータブル電源の選び方、電化製品を使うために必要な電力容量について説明した記事はこちら
冬の車中泊、その他の注意点
積雪時は必ずアイドリングストップを!
編集部:その他、寒さ対策以外に冬の車中泊で注意すべき点を教えてください。
大橋:降雪・積雪時には必ずアイドリングストップをしてください。マフラーから出た一酸化炭素が逆流して車内に入り込み、死に至る危険性があります。
靴の滑り止めがあると便利
大橋:また、夜にトイレにいくなど車外に出る際には、地面が凍結していないか注意が必要です。足元は暗くて見えないせいもあって、車外に一歩出たときに滑って転んでしまったという話をたびたび耳にします。摩擦力の高い滑りにくい靴底のシューズや、簡易的な滑り止めを用意しておくとよいでしょう。
編集部:そうなると、駐車する場所もよく考えたほうがよさそうですね?
大橋:はい、水が溜まりやすいようなところは、路面が凍結する可能性があるので要注意です。また、アイスバーン状態になったところがもっとも滑りやすいので、駐車する際には路面状況を確認することが大切ですね。
天気予報をしっかりチェックしよう
編集部:基本的なことですが、そもそも悪天候のときには車中泊をしないようにすべきですね。
大橋:まさに悪天候時には無理に車中泊をしないで、ホテル泊なども検討するといった柔軟な対応が大切です。それから天気に不安があるときには、スマホなどで細かく天気予報をチェックするなど事前の情報収集も意識しましょう。
まとめ
編集部:寒さ対策については、上の画像にまとめてみました!
大橋:最後に、冬の車中泊では窓ガラスに結露がよく発生します。朝起きたら、結露で前が見えないことが多いので、水滴をふき取るタオル類や結露ワイパーなども準備しておくとよいでしょう!
編集部:なるほど。朝、出発しようと思ったら結露が凍結して出発できないのも不便ですものね。
大橋:しっかり対策をして、なにより無理をしないことが大切です。クルマの防寒とカラダの保温をしっかりして、安全で楽しい冬の車中泊ライフを楽しんでください!
※1 本記事を参考にされる場合は、自己責任にもとづいたご判断のうえ行ってください。
※2 本記事に掲載された情報は、記事公開時点のものです。
監修/大橋保之
文/神山ともひろ