車中泊で全国各地を巡り、四国で見つけた理想のキャンプ場とは…?~イラストレーターいとうみゆきのクルマのおうち旅

いとうさんと白くま

イラストレーター・いとうみゆきさんのクルマのおうち旅・四国編。しまなみ海道をエンジョイしたいとうさんと白くまがいよいよ四国本土に突入! 

たどり着いたのは良さげなドライブコースがたくさんありそうな愛媛県。走っていて気持ちのいいポイントを巡り、美しい景色をたくさん通り過ぎながら、日本一長い半島である佐田岬半島を駆け抜けていきます。

 

▼プロフィール

いとうみゆきさんのプロフィールイラスト
イラストレーター いとうみゆき
埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
Twitter @noca_m
Instagram @nmoytke
HP ito miyuki's illustration

 

▼前回の記事はこちら▼ 

目次

 

愛媛ドライブルートの画像

ゆめしま海道を遊び尽くしたあと、瀬戸内しまなみ海道(西瀬戸自動車道)を通り、いよいよ四国本土の愛媛に入ります!

来島海峡大橋

大島と四国を結ぶ来島海峡大橋

しまなみ海道は、広島県と愛媛県を結ぶ全長約60kmの自動車専用道路。いくつもの島と橋を渡っていく、絶景海上ドライブルートです!
いくつもの島と橋を渡っていくのはとても気持ちがいいものです。

特に感動したのが、大島と本土をつなぐ「来島(くるしま)海峡大橋」でした。3つの橋が連結しており、総延長4.1kmにもなる橋は迫力満点。

橋を渡る白くま

瀬戸内海に浮かぶ島々が見えて、とても気持ちがよかったし、さっきまで見ていたあのでっかい橋を渡っているんだ…と思ったらドキドキしたし、この橋を作った人たちすごすぎないか…となんだかおそれ多い気持ちにもなりました。

ちなみにしまなみ海道には自転車専用道路もあるので、高速道路なのにすぐ隣を自転車が走っているんです!  不思議な光景でした。

橋を渡り終わったらそこは四国本土。これからどんな旅が始まるんだろう。
連なる大きな橋は、まるで歓迎のアーチのよう。とってもワクワクしながらついに上陸です!

 

①魅力盛りだくさん「来島海峡サービスエリア

来島海峡サービスエリア駐車場

橋を渡りきってホッとしたところに、「来島海峡サービスエリア」が現れました。しまなみ海道を渡ってきた私にとっては最初のサービスエリア、これから渡る人たちにとっては最後のサービスエリア。たくさんの観光客やサイクリストで賑わう、とってもきれいなスポットです。

せっかくなのでちょっと降りてみることに。 
橋を渡り切った高揚感を覚えつつ散策をしているうちに、ここがなんだか見どころ満載のすごいサービスエリアだということに気が付きます…

 

来島海峡サービスエリアのここがすごい!

蛇口みかんジュースが飲める

蛇口から注がれるみかんジュース

カフェコーナーの1番目立つ位置にあります

最初の感動! ずっと憧れていた蛇口みかんジュースがありました! 
愛媛に来たんだ〜って気持ちでいっぱいに。お金を払ってコップをもらい、自分で注ぐスタイルです。その体験が楽しいし、何よりとってもおいしいの。
喉も乾いていたし、ちょうどいい休憩になりました。

 

「みちメシ王座決定戦」1位の「宇和島風鯛めし」が食べられる

 食堂で宇和島風鯛めしを食べている

とりあえず腹ごしらえ! と入った食堂で、「みちメシ王座決定戦1位」の文字が! 「みちメシ王座決定戦」とは、瀬戸内エリアのSA・PAナンバーワンメニューを決めるコンテストだそうです。そしてグランプリを受賞したみちメシ、「宇和島風鯛めし」は来島海峡サービスエリアの名物! 

宇和島風鯛めし

真鯛の刺身に卵とダシのたれをかけていただく

もともと愛媛県に来たら鯛めしを食べてみたいと思っていたので、こんなところで食べられるなんて嬉しすぎます。しかもサービスエリアを利用しないと食べられないグランプリご飯。ここ最近は売店のおにぎりとかパンばっかりだったので、幸せなひとときでした。

 

とにかく絶景が広がるサービスエリア

食堂から望める絶景

しかも目の前に広がるのはこの景色!
今まで渡ってきた橋、過ごしてきた島々を眺めながら食べることができるんです。オーシャンビュー食堂でおいしいご飯…ここまで頑張って運転してきたこともあり、最高のごほうびでした。

展望テラス、マッサージチェア、宇和島風鯛めし、お土産コーナー

他にも素敵なサービスがいっぱいの来島海峡サービスエリア。

  • オーシャンビューマッサージチェアがあり、運転で疲れた身体をゆっくり休めることができる
  • 展望テラスで自分が今まで渡ってきた(orこれから渡る)しまなみ海峡の橋をゆっくり眺められる
  • しまなみ海道や橋の歴史を知ることができる展示室がある
  • 四国だけでなく中国地方まで網羅した充実したお土産エリア
  • そしてなんといってもお刺身を使った愛媛・南予地方の郷土料理「宇和島風鯛めし」が食べられる

 などなど…

さらにこの日は休日だったので、ジャズバンドが生演奏をしていたり、愛媛県内から集まったおいしそうな名物が限定で販売されていたりと大賑わい。
おいしい食べ物にいい景色、極楽マッサージチェアでゆったり…すっかりくつろいでしまい、いきなり愛媛県のことが大好きになってしまいました。

来島海峡SA
住所:愛媛県今治市大浜町3-9-68
TEL:0898-33-8633
営業時間:フードコート、売店 / 8:00~21:00(平日)、7:00~22:00(土日祝)
外売店、カフェ / 9:00~17:00(平日)、9:00~18:00(土日祝)
URL: https://s-leading.co.jp/kurushima

 

②日本の名水100選「観音水」で、車中泊旅の水補給

車中泊生活で重要なことの1つが飲み水の確保。
そして水をゲットする方法の1つが、自然の湧水を汲むこと! 

日本の名水100選にも選ばれた「観音水」を汲むために、早速クルマを走らせます。

湧き水を汲んでいる

町の中心から少し離れた、山深い場所に観音水は湧いていました。

おいしい水を求めてあちこちドライブするのも結構楽しいんだよなあ。湧水巡りは、クルマ旅をするたびにしてしまうことの1つです。

観音水

5月~8月の期間限定でそうめん流しも体験できるそう

湧水を汲む場所は駐車場から歩いて2分ほどの場所にあったのですが、遊歩道があったため奥まで歩いてみることに。
すうっと気持ちが落ち着く森と水のにおい。水の流れる音と葉っぱの揺れる音。豊かな自然が満ちていて、とっても楽しかったなあ。

散歩道を奥まで辿っていくと、観音様が立っていました。そしてその隣の洞穴から湧き出る湧水! その量は1日8,000tにもなるそう。はるか昔からずっと湧き出ている湧水とその周りの自然に触れられることがとってもうれしい。
後でコーヒーでも淹れよう、料理もしちゃおう。今日と明日はこのお水で生活させていただきます!

ちなみに、愛媛県には他にもいくつか湧水がありました。
特にすごかったのが町のあちこちに湧水場があった西条市。住民のほとんどが湧水を利用して暮らしているため、上水道の普及率がとっても低いそうです。

海底から湧き出ている不思議な湧水「弘法水」も西条市にありました。

海の上に建てられた小屋

弘法水

近隣に住む人は長寿の方が多いと言われている

弘法大師が杖で叩いたら湧き出たという伝説がある場所で、海の上に建てられた小屋から汲むことができます。

面白いし、おいしいし、飲み水に困らない毎日だし、愛媛県ってとっても楽しい…!
愛媛県でクルマと一緒に湧水場巡り、おすすめです!

 

③「かわいい」を探しに、あちこちドライブ

ここからはぐるぐる色んなところを巡って、ドライブを楽しみます。

道で見かけたかわいいものたち

全く知らない土地って、運転するだけで色んな「かわいい」を見つけることができてとっても楽しい。

ドライブ途中に目についたスポット

気になるものを見つけるとすぐにクルマを停めるからなかなか進まないのだけれど、それも含めてとっても楽しいんです!

青龍橋

愛媛県道47号の延長444mのループ橋、青龍橋

目の前にループ橋が現れたときもテンションが上がりました! この橋の名前は青龍橋(せいりゅうはし)というそうです。確かにループ橋って天にのぼる龍みたいだよなあって納得しました。

別子ライン

ライン川に渓谷美が似ていることから名付けられた別子ライン

ループ橋を渡り、別子(べっし)ラインと呼ばれる道を進んでいきます。

ここはクルマで通るのが難しいと言われており、途中にある道の駅から出ている観光バスで来る人も多いよう。確かに山道に慣れていないと少し戸惑うかもしれない道幅の狭さと暗さ。冒険みたいで楽しかったです。

別子銅山の東平

標高750mの山中に突然現れる、別子銅山の東平

別子ラインを進んでいくとあるのは、鉱山都市「別子銅山の東平(べっしどうざんのとうなる)」 新居浜の深い山中に現存する産業遺産群です。この日は天気が悪く、進めば進むほど霧が深くなり、着いたときには遺跡たちは霧の中…はっきり見えなかったのは残念でしたが、なんだかゲームの世界のようでとっても雰囲気がありました。ちょっと怖かったけど。

怖いといえば、もう1つ。

大峠隧道

「ガリバートンネル」の愛称で地元民から呼ばれている大峠隧道

トンネルの中にトンネルがある!! という珍しいトンネルも見つけました!
大峠隧道(おおとうげずいどう)というトンネルで、一見すると普通のトンネルなのですが、中にさらに小さなトンネルがあるんです。

想像以上に狭くて、本当に通れるのか? としばし固まってしまいましたが、意を決して発進。スリムな白くまなら行けるはず!!

車幅ギリギリで走る

おそるおそる進んでいくと…

無事にトンネルを通過できた

無事通り抜け! 中はアトラクションみたいですっごく面白かったです。
ちょっと怖かったけど、いい思い出になりました。

 

④四国最西端の、日本一細長い半島にある「佐田岬メロディーライン」

そして今回の一番の目的地がこちら。
四国最西端に位置する日本一細長い半島「佐田岬」です!

佐田岬ドライブマップ

ここまでのドライブでもいろいろなものに出合いましたが、この佐田岬にも「かわいい」がいっぱい。

展望台、海沿いの道路、風力発電タワー、佐田岬メロディー道路

道の脇に神殿が現れた!? と思ったら展望台だったり、山からニョキニョキ生えている風力発電タワーだったり。(大久展望台/佐田岬風力発電所)

 

突然現れた、佐田岬メロディーライン

佐田岬メロディーライン

さらに、道路に音符マークが現れた!? と思ったら直後に車内に響き渡る「みかんの花咲く丘」!! (佐田岬メロディー道路)

これは、溝の入った道路とタイヤとの摩擦で音を奏でる、という仕組みのメロディー道路。四国唯一のメロディー道路があることは知っていたのですが、突然だったので面白すぎて笑ってしまいました。

みかんトロッコ

それから道路の脇にあるたくさんのみかんトロッコ(農業用モノレール)も面白かったな。
はじめはなんだか分からず疑問を抱きながら運転していたから、その正体に気がついたときの感動と言ったら。

佐田岬に住んでいる人たちからしたら、どれも特別なものではない日常の風景なのでしょうが、ふらふら〜っとやってきた私は大はしゃぎ。
もう本当に楽しくて、次は何が出てくるんだろうってワクワクして、走っているだけで楽しくてずっとご機嫌でした。

あとは名物のじゃこ天がおいしかったり、ふらっと立ち寄った施設から九州行きのフェリーが出ていてびっくりしたり、道の駅が2つもあったり、個人的に愛媛県の中でもトップを争うくらいのいい温泉もありました。とにかく盛りだくさんのドライブコースです。

 

行きたかった灯台までお散歩

そして佐田岬の先端に到着して見えてきたのは灯台!

灯台まで1人でお散歩していく道のり

私がクルマ旅をするとき、湧水場巡りと同じくらい楽しみにしているのが灯台巡りなんです。ここまでずっと一緒に佐田岬を走ってくれた白くまにはちょっと休憩してもらって、私はお散歩へ。

崖の上にある灯台

人っ子一人いない、風の強い日でした。
崖の上にどっしりと建っている灯台がとても美しく、しばらく見入ってしまいました。

灯台の孤独感が私はとっても好きなのです。誰かの目印になりながらも自分は動くことも人に会うことも少なく…ただただずっとそこにいることに、なんだか美しさを感じるから。
この灯台は今回の旅の目印でもありました。やっと来れてよかった!

孤独を感じさせる灯台

クルマ旅をしていると、ときどき孤独を感じることもあります。それは寂しいとかではなく、自分にしっかり向き合えるいい孤独です。
クルマのおかげで人が全然いないところにいくことができ、自分自身を見つめることができるからこそ生まれる、いい感覚です。

人とのコミュニケーションはあまりないものの、白くまと一緒なら、こんな遠くまで連れてきてもらえる。知らなかった景色に触れることができる。こんなに美しい灯台と海に出合えた。うれしいなあ、本当に。

そういえば白くまとの長期旅は初めてだったけど、気がついたらもう2,000kmも走ってる…四国の最西端まで来ることができて、本当によかった〜!

強い風の中、一人で過ごす時間は私にとってとても大切な時間です。

 

⑤フリーダムキャンプ「ムーンビーチ井野浦キャンプ場

佐田岬の最西端から少し東に行ったとこにある「ムーンビーチ井野浦キャンプ場」が今日の私たちの寝床です。
広くて白い砂浜、透き通った青い海、少し遠くに見える赤い防波堤灯台と風車発電タワー。それらがクルマの中から見える、最高の海辺キャンプ場…しかも無料なんです!! 

綺麗な海が車窓から見える

なんでもない駐車場だけど、景色が最高すぎてテンションが上がります。理想のキャンプ場を見つけてしまいました。

小物入れから日焼け止めを取り出す

外に出る前にちゃんと日焼け止めを塗ったら(シートバックに取り付けた小物入れのおかげでさっと取り出せて楽ちん)

ご機嫌で外で遊んでいるいとうさん

早速外へ! 
とっても天気がいい日だったので、ソーラーパネルを使ってポータブル電源もしっかり充電です。水は湧水、電気は太陽……車中泊旅はぷち・オフグリッド暮らしです。
ソーラーパネルを設置し、ちょっと身体を動かしたらまたクルマへ。

車内でコーヒーとパンでひと休みするいとうさん

バックドアを全開にして、景色を独り占めです。こんなに素敵なところで白くまと一緒に過ごせるなんてとってもうれしい。
お散歩もいいけど、おうち大好きインドアの私にとっての1番の至福はこの時間。
開け閉めが簡単になったカーテン、欲しいものをすぐに手に入れることができる棚や小物入れ、かわいい水耕栽培植物のある最高のおうち、しかも今日の窓からの景色は最高!

ここに来る直前にあったコンビニで買ったパンとコーヒーでとりあえず一服。クルマのおうちでコーヒーを淹れたり、おいしい料理を作って楽しむときもあれば、買ってきたもので幸せになるときもある。どう過ごしたって、何したっていいのがクルマのおうちです。
今夜と明日はここでダラダラするぞ〜

…と思ったらここはただの海岸駐車場で、キャンプ場ではありませんでした。

ムーンビーチ井野浦キャンプ場

トイレに行くために少し散歩をしたおかげで気がつきました…キャンプ場は隣にありました。 
とにかく人がいなかったので、どこがキャンプ場か認識するのに時間がかかってしまったのですが、改めて、こちらが最高のキャンプ場です!!

施設は男女共用トイレが1つだけ。(男女別トイレ、水シャワー、水場などもありましたが、夏以外は閉まっているようです。)
最低限の施設ですが、芝生があって、すぐ近くに海があって、人が全くいなくて、オートキャンプが可能な、素敵な隠れキャンプ場です。

今夜のキャンプ地も決まったので、夕ご飯を作ります。と言っても今日は簡単ご飯の日。

じゃこ天としらすを乗っけただけ丼

佐田岬散策中にゲットした、じゃこ天としらすをご飯の上に乗っけただけ丼です! 
地元のもので簡単においしく。正義の夕ご飯です。

満点の星空

 

まとめ

前にクルマ旅をした国ニュージーランドでは、無料キャンプ場のことを「Freedom camp site」と呼んでいました。無料で最低限の施設がある場所のことです。
そして同じように無料、かつ貸切の今夜は完璧なフリーダムキャンプナイト!

夜、本当に誰もいなかったので持ってきていたギターを取り出してこっそり遊びました。

誰もいないキャンプ場でギターを弾いているいとうさん

真っ暗な闇の向こう、すぐ近くで低い波の音が鳴っていて、私も何か音を出したくなったのです。
誰もいない中1人でいるのはなんだか心細いので、火を焚いて、歌って…

暗い夜はやっぱりちょっと怖いので、今日は早めに布団に潜り込みます。
そうしたら、ちょっと怖かった波の音はやさしい子守唄に変化しました。

波の音が心地よい眠りを与えてくれる 

窓を開けると波の音はもっと近くになり、まるで波に包まれているかのようでした。
(虫が入ってきたので慌てて網戸をつけました。作っておいてよかった〜)

家で寝ているときよりも、自然がすぐそばにある車中泊。テントよりも頑丈な動くおうち。
今日はたくさんの「かわいい」に出合って、たくさん運転して、お腹も気持ちもいっぱいになって、とっても楽しかったなあ。

次はお隣の香川県に行きます。何に出合えるのか、とっても楽しみだ!

 

漫画/いとうみゆき
写真/いとうみゆき、Mojahrney
編集/古郡充彬、TAC企画