必要なものだけをバンに詰め込んで、自由気ままな旅に出る「VAN LIFE(バンライフ)」。それを実践する「バンライファー」たちは、場所や時間にとらわれることなく、自分らしい生き方を追求しています。
「わたなべ夫婦」は、夫婦2人で車中泊での日本一周にチャレンジし、その様子を動画で配信するYouTuber(ユーチューバー)です。関西出身のお二人のまるで漫才のようなゆるいトークが人気を呼び、チャンネル登録者数は9万人を超えています。
現在はYouTubeクリエイター、車中泊の情報を発信するブロガーとして大活躍のわたなべ夫婦ですが、以前はお二人とも大企業でバリバリ働く会社員だったといいます。ここに至るまでには何があったのでしょうか。
「夫婦一緒に楽しく暮らすのが、一番大切なこと」と笑顔で話すわたなべ夫婦に、VAN LIFEにまつわるストーリーを聞きました!
- だいきさん
- 「わたなべ夫婦」の旦那。奈良県出身の27歳。京都大学を卒業してメガバンクに入社後、ベトナムのベンチャー企業に転職。帰国後、2018年から、ゆみさんとVAN LIFEをスタート。
- ゆみさん
- 「わたなべ夫婦」の嫁。兵庫県出身。広告代理店に勤めた後、退職してベトナムへ移住。帰国後、だいきさんとともにバンライファーとして活動。
- わたなべ夫婦
- 2018年11月に始めたYouTubeチャンネル「わたなべ夫婦」がヒット。車中泊情報ブログ「VAN LIFE」も月間50万PVを超えるまでに。2019年9月には、新たにブログ「25歳のきみへ」もスタート。
YouTubeチャンネル「わたなべ夫婦」
ブログ「25歳のきみへ」
Twitter @daiki_w22
Instagram @watanabe_fufu
目次
ベトナムで離婚危機! 夫婦の時間を作るためのVAN LIFE
お二人がVAN LIFEを始めたきっかけを教えてください。
だいき:あのとき、ぼくたち夫婦は「どん底」にいたんです。2017年春にゆみと結婚したすぐ後、ぼくはキャリアアップのためにベトナムにあるベンチャー企業に転職。その数ヵ月後には、ゆみも会社を辞めてベトナムに来てくれました。
でも、ぼくは朝から晩まで働いて忙しくて、ゆみは異国の地で何もやることがない。ベトナムでの2人の生活はすれ違いの連続でした。
ゆみ:私はひたすら「日本に帰ろう」と言い続けて、だいきは「もうちょっとがんばろうよ」と返事する。話がかみ合わないまま毎日のようにケンカして、ついに2018年の2月、私はベトナムから日本に帰国してしまいました。
だいき:ここでぼくは初めて、事の重大さに気がついたんです。このままでは離婚になってしまう、絶対に別れたくない! と思って、日本に帰ったゆみに連絡し、これまでの自分の気持ちを正直に伝えました。
ゆみ:本音で真剣に話し合ったのは、そのときが初めてです。お互いが相手の気持ちを理解していなくて、そのせいで余計につらくなっていたのだとわかりました。2人で「ごめん」と謝り合って、やり直すための方法を考え始めました。
だいき:やり直すには「2人で一緒に過ごす時間」が絶対に必要です。ぼくはベトナムの会社を辞めて日本に帰ることを決めました。でも、じゃあ日本で何をする? と考えたとき、またサラリーマンに戻ったら前のように時間がなくなってしまう。だからといって、今、とくにやりたいことも見つからない。とにかく、もっと時間が必要でした。
ゆみ:「だいきが帰ってくるまでに、大阪あたりで住む家を探しておくね」と話していたら、ある日だいきが「家はいやだ!」と言い出したんです。「家を構えると、できることがその周辺に限られてしまう」と。
だいき:家もないし、仕事もない。だけどしばらく暮らせる程度の貯金はあります。せっかく何のしがらみもない状態で2人の生活を再スタートできるのだから、1年くらい旅をしながら人生について考えてみるのもいいかなと。そうして思いついたのが「クルマで旅をすること」でした。
クルマ1台あれば、人は生きていける
VAN LIFE未経験だったお二人が、どのようにしてバンでの生活をスタートさせたのでしょうか。
だいき:2018年の7月から日本一周の旅を始めました。マツダのボンゴバンの中古を安く手に入れて、そこにニトリで買ったセミダブルのマットレスを置いて、それだけ。寝られればいいという感じでした。
ゆみ:初めは食事を作るという発想もなくて、すべて外食でした。朝コンビニ、昼スーパー、夜に食堂とか。1ヵ月くらい経ってさすがに飽きてきたので、カセットコンロとフライパンを買って、運転席のシートにのせて料理し始めました。あれは今思えばすごく危なかった(笑)。その後改良して、荷室で調理できるようになりました。
ストレスになりませんでしたか?
ゆみ:全然! むしろ、VAN LIFEって想像よりもずっと簡単なんだと驚きました。クルマ1台あれば、意外と生活できちゃうんだなって。
まず向かったのは北海道でした。夏の北海道は、車中泊をしている人がたくさんいて、泊まれるスポットも多く、とてもやりやすかったです。
車中泊できる場所はネットで調べたり、本を見てそのスポットに行ったり。クルマ旅の第一人者である稲垣 朝則(いながき とものり)さんの本をよく参考にしていました。
2人の時間を仕事に変える。旅で見つけた新しい働き方
現在はYouTubeとブログをメインに活動されていまが、これはどのような経緯からですか?
だいき:最初はブログでした。旅が始まるのと同じタイミングで、ぼくたちの旅の記録と車中泊に関する情報をまとめた「車中泊パラダイス」(現在は「VANLIFE」)というブログを開設したんです。
ブログを始めた翌月、広告収入で数千円のお金が入ってきました。今までのように会社に勤めてお給料をもらうのではなく、初めて自分たちだけの力で収入を得ることができたと感じて、すごくうれしかったです。
ゆみ:とはいえ、たったの数千円で。私はこのまま貯金が減っていくことが不安で「リゾートバイトとかで稼いだほうがよくない?」と話していました。
でも、だいきはスーパーポジティブなんです。「今すぐ大きなお金にならなくても、バイトの時間をブログに使ったほうが、長い目で見たときの資産になる。目先のお金を稼ぐより今のやり方を続けよう」と言ってくれました。
だいきさんの考え方は、投資の発想ですね。YouTubeを始められたのはなぜですか?
だいき:YouTubeチャンネルを開設したのは2018年11月。たまたま旅の途中で車中泊YouTuberの「KEN'S キャンプTV」さんにお会いしたのがきっかけでした。
当時の日本ではまだVAN LIFEという言葉が一般的でなくて、車中泊というとアウトドア好きの男性が1人でする「男のロマン」的な扱いでした。ぼくたちのように、夫婦で車中泊を楽しんでいるのは珍しかったので、やってみる価値があると思いました。
ゆみ:YouTubeを始めるとき、どんな方向性にしたらいいのかすごく考えました。有名YouTuberさんたちによくある「はいどうもー!」みたいなハイテンションは、私たちのキャラと違う。無理にキャラを作るのはしんどい(笑)。
だから私たちは、自分らしい自然な姿を撮るのが、逆に差別化になるのではと思いました。カメラを意識しないYouTuberとして、2人のいつものやりとりをそのまま撮影してます。
だいき:それがうまくハマったんだと思います。動画を投稿して、視聴者の反応を見ながら次の動画を作って、また投稿して。もっと面白い動画にしたいと日々考えていたら、視聴数がどんどん伸びていきました。
スタートした翌月の12月には収益化が始まり、収入が入ったのは2019年の1月。そこからYouTubeの収益だけで旅の資金がすべてまかなえるようになったんです。
VAN LIFEを1年間やって、わかったこと
わたなべ夫婦にとって、VAN LIFEとは何だと思われますか?
だいき:VAN LIFEってすごくおしゃれで、がっつりDIYして作り込まなきゃいけないみたいなイメージがありますけど、そうじゃなくてもいいとぼくは思うんです。
ゆみ:最初は私たち、変なプライドがありました。VAN LIFEは「ライフ」だから生活そのものだと解釈していて、「帰る家もなくクルマで暮らす私たちこそ、ほんまもんのバンライファーや!」って(笑)。
だいき:ぼくたちはただ生活してるだけ。ファッションでやってるんじゃなくて、日常生活と変わらない。そういう思いがありました。
1年間のVAN LIFEを経て、その解釈は変わりましたか。
ゆみ:1年間やってみて、ちょっと限界が見えました。今年の春ごろに、VAN LIFEをしながら短期で部屋を借りたんです。そしたらもう、すごく便利で!
家があればいつでもお風呂に入れるし、着替えられるし、車中泊のスポットを探さなくていい。1周まわって「家ってすごい」と気づいてしまった(笑)。
あとは、個人事業主として活動するようになって、書類のやりとりなどで、自分たちの住所が必要になったというのもあります。今の日本の制度では、完全に住所を持たない生活は難しい。
だいき:ぼくたちにとってのVAN LIFEはあくまで、これから生きていく道を見つけるという「目的」を果たすためのもの。もう進む道は見つかったので、これ以上無理して移動を続ける必要はありませんでした。
そこで今年の6月、VAN LIFEをいったんストップして部屋を借りました。でも、これからも旅は続けるつもりです。旅を休んでいるあいだにボンゴを改造したので、より車中泊がしやすい車内空間にバージョンアップしました。クルマだけ、家だけ、という両極端な暮らしではなく、両方あっていいと今は思っています。
今後はより一層2人の時間を大切にしながら、ネット以外でも収入を得られるようにしていくつもりです。そのために新たに不動産事業のための会社を立ち上げました。
VAN LIFEを通して学んだのは、人生を楽しむこと
もとは離婚の危機からVAN LIFEを始められて、お二人の関係はどのように変わりましたか?
ゆみ:長い旅の中で「1人になりたい」と思ったことは一度もないです。今は2人でいる状態が一番落ち着きます。いつも同じ景色を見て、同じごはんを食べて、同じ体験をして、話題は尽きません。
だいき:関係の修復という点では、バン1台で旅するというやり方が、ぼくたちにピッタリだったんだと思います。ボンゴでの旅が快適だったので、思う存分2人の時間に集中することができました。その分、友だちは減りましたけど(笑)。
旅でずっと一緒にいると、けんかもしやすくなりそうですが……。それだけお2人のフィーリングが合っていたということでしょうか。
ゆみ:旅でありがちなケンカって「私はこっちに行きたい」「いや、おれはあっちがいい」とかだと思うんです。それは旅に使える時間が限られているからですよね。でもVAN LIFEは時間の制約がないので、お互いの行きたいところ両方に行けばいいし、対立しようがない。
だいき:たとえば2泊3日で台湾に行く旅行とかだと、スケジュールをこなすのにすごく忙しい。しかも行った先がたまたま休業日で、なんとなく険悪な雰囲気になってしまったりとか。VAN LIFEだったら「閉まってる? じゃあ今日はこのへんでクルマ停めて、明日行こうか」と、自由にできる。基本的にストレスフリーなんです。
そうしてゆったりとした時間を過ごされて、ご自身の価値観に変化はありましたか。
ゆみ:VAN LIFEをしてみて、時間や場所など、今まで自分を縛っていたいろんなものから解放されました。私はたぶん、まわりから認められたいという思いがずっとあって、そのために「こうしなければいけない」とルールを決め込んでいた。でも、それは全部まぼろしだとわかったんです。
生きるのってこんなに簡単だったんだ! そう気がつきました。クルマ1台あれば生きていけるんだから、もう何でもいいじゃないですか(笑)。VAN LIFEは人生を考え直すための旅の手段として、手軽に始められるのがいいなと思います。
だいき:結局、VAN LIFEは手段の1つに過ぎません。そこで何を感じて、何を得るかは人それぞれ。ぼくたちもたくさん悩んで、その中で自分なりの答えを見つけました。
これからもYouTubeやブログでの発信を続けることで、過去のぼくたちのように人生を悩んでいる若い人たちに向けて、選択肢を与えられればと願っています。
※ この記事の内容は、記事公開時時点での情報です。
文/小村 トリコ
写真/渡邉 一生
関連記事
車中泊の進化系! クルマ×暮らしの次世代スタイル 「VAN LIFE」って何だ?
2019.08.20広がる車中泊の世界「モバイルハウス」とは? 軽トラやバンのカスタムにも注目!
2019.12.16軽自動車N‐VANの車中泊。女子キャンパー森 風美さんが気になる寝心地を体験レポート
2019.10.24暮らし初心者や女子キャンパーにオススメ! FREED+で初の車中泊キャンプに挑戦!
2019.04.15